教育×ブロックチェーンという世界があるらしい

『EdTechが変える教育の未来』というを本を読み、その中で「教育におけるブロックチェーンの活用」という概念が紹介されており、初耳だったのでちょっくら調べてまとめてみるかという記事です。この本自体は21世紀に求められる(と国とかが言っているような)能力・教育のあり方の話やEdTech(教育×テクノロジー)に関する実践がゆるゆると紹介されておりその辺をざっくりつかむのに良い本かなと思います。

ネット上にいくらか記事があるので紹介。ソニーが目立ちますね。

 

www.watch.impress.co.jp

crypto.watch.impress.co.jp

 

www.asteria.com

gaiax-blockchain.com

 

ぱっと調べて出てくる資料の中では、教育におけるブロックチェーンの活用方法は2つありそうです。

①学歴(学位)を信頼できる仕組みで管理することで偽造を防ぐ

②学習歴(何を学んだか)を都度記録し、各機関が使えるようにする(受験、採用等)

また、これに加えて学習傾向を収集することで教育政策に活かしたり、次に学ぶべきことを適切にレコメンドしたりできそうです。

 

さて、これに対して懸念点(わからなかった点)が2つ

ポートフォリオの活用と格差の助長

②のような学習歴や学生時代の活動(これをポートフォリオと呼ぶらしい)をまとめて受験に活かそうというのが進められているそうです。このポートフォリオの活用は経済格差が反映されるという指摘をちょくちょく目にします。その格差助長につながるようなものを推し進めることは良いのかというそもそもの部分に対する疑念ですが、ブロックチェーン活用自体の問題ではないのでどうなんだろうなあくらいでここでは留めておきます。

・何を学んだかが集中管理されるのは良いことなのか

教育×ブロックチェーンの文脈で本筋となる問題はこちらでしょう。教育歴がブロックチェーン上に積みあがるということは、誰もが見れるようになるはずです。活用しようと思ったときに相手に知られたくない学習歴まで知られてしまいそうです。そもそも見られたくない学習歴というものが存在するのかという問題ですが、世の中の人が全員善良であればそういった学習歴はないはずです。ただし、善良ではない人がいた場合、学んだことイコールその人の思想と考えるような人がいること、活用とは関係ない部分(例えば企業の採用時に、労働とは関わらない部分)で思想(とその人が勘違いしているもの)を基に不利な扱いを受けることがありうる(いや思想でも不利な扱いをしてはいけないんですが)ことを考えると、全部オープンにしたくはないなあという気がします。最初の記事の中で「ブロックチェーン上でデータを共有するかどうかは、あくまでも学習者自身が決めます」とありますが、ブロックチェーンの性質上おそらくいったん共有したら引っ込められないはずなので、後でやっぱり見せたくないなとなったら困りそうです。

というわけで、分散させてデータを保持し改竄耐性を高めるブロックチェーンと見られたくない相手に見られたくない部分を見せないというのは致命的に相性が悪そうですが、ブロックチェーンについて特段詳しいわけではないのでこの辺を上手いことする実装があったらすみません。ちなみにぱっと思いつく解決策は国際的・中央集権的な学習歴記録規格を作って管理する(=ブロックチェーンを使うことをあきらめる)方法があります。この記事は何だったんだ。

ブロックチェーンを用いた解決策として、ブロックチェーン上に残しておく情報は暗号化しておいて伝えたい相手だけに鍵を渡すみたいな方法もありそうですが、鍵なくしたら学歴もなくなった!みたいなことが起こりそうで楽しみですね。