文系修士の就活について② 「就活で不利」を考える(体験記に代えて)

 前回はこちら

 いわゆる「文系修士は就活で不利だ」という言説を考えるために、自分が具体的にどういう風に就活をしたかという話をします。個人的なことがつらつらと書かれていてつまらないかと思われますが、それ自体が言いたいことではないのでつまらなければ具体的なところは斜め読みしてください。

 一応万人に役立ちそうなそれっぽいことを最初に言っておきます。分野を問わず学問をやった結果として「資料を精査し現状を分析して正確に把握した上で現在のあり方の問題点を指摘する」といったことをする力が(学部の人よりも)あるはずなので、業界研究とかを死ぬほどして逆質問とかでめっちゃ痛いところを突くことができるはずなのでやると良いです。生意気だと言って評価を下げる会社もあるかもしれません(本当に???)がそういう会社は行かなくてよいので大丈夫です。問題は本気でこれに取り組み始めると本業の研究をする時間が無くなることです。あとちゃんとやらないと付け焼刃だなと思われそうです。

 さて、以下しばらくは個人的な話なので斜め読みで良い部分です。はじめに私はこんな人間ですというのを箇条書きで記しておきます(知ったこっちゃないでしょうが最後の結論周りで必要なので…)。

  • 専門は言語学。日本語の統語(文法)・意味。研究に際して授業でプログラミング(python)を少しやったことがあった。
  • サークルでサイエンスコミュニケーション(楽しい理科実験教室を主に子ども相手にやる、でんじろう先生的なこと)をやっていた。
  • ↑2つの事情もありIT業界に興味があった。
  • 学部東大→院東大

 次にどんな感じに就活を進めていったかの大雑把な進行を示します。

  • 9月ごろ 就職するべきでは?と思い立つ
  • 10~1月 大学主催の説明会に行ったりインターンに行ったり
  • 2月 エントリーが始まる、半ば過ぎに結果的に就職する会社から内定を得る
  • 3月 大企業を簡単に見た後、末に内定を承諾して終わり

なんで大企業じゃなくてベンチャー選んだの的なことも書こうと思えば書けますが関係ないので省略。就活しようと思い立った経緯はたぶん次回。

 最後にどういった企業を見ていったのかについて。基本的にはIT企業を見ていました。最初は未経験だしなあとSIer*1を見ていましたが、色々と話を聞いていくと自然言語処理をやっている企業がちょくちょくあって自分も何かしら関われるのでは?→それっぽいことをやっているWeb系・自社開発企業*2についてベンチャー*3を中心に探していったという感じです。まさしく自然言語処理をやっている企業から内定をいただいて、その後少し他の企業(日系大企業SIer)を見た後に内定承諾、3月末に就活を終了しました。

 結果としては6社受けて2社内定、2社落ち、2社途中辞退でした。以上の経緯と数字を見ると一般的に苦労すると言われているのに対して全然苦労していない感じがします。実際、ベンチャーに行くか大企業に行くかについて悩みはしましたがここでは特に苦労したな~という認識はありません。ここでこんなすんなりいったんだぜーすごいだろーというのを言いたいのではなく、何故すんなりいったのかを考えてみたいというのがこの記事の趣旨です(やっと本題に入れた)。「文系修士 就活」で検索した時に出てくる悲壮感漂うブログや記事たちとは何が違うのか考えたいということです。上手くいった気がする理由は以下のような感じでしょうか。

  • 志望業界と専門が少なからずかみ合っていた、プログラミングを多少なりともやっておいたのが良かった、そもそもIT・ベンチャーが人手不足で入りやすい業界だった。
  • サークル活動で社会人とのやりとり、チームをまとめるといったことをしていたので社会で求められる能力が(最低限は)ありそうだということを示せた。
  • 東大卒の肩書が(文系修士は不利だという前提を覆すほどに)強い。

 これらが総合的に効いてた*4のだと思いますが、どれが特に重要だったのかを考えるためには比較をしたいところです。が、前回述べた通り、文系院生が世の中に全然いないことが問題になるわけです。普通の就活であればサークルの先輩とかゼミ・研究室の先輩といった近い背景を持つ人に色々と話を聞いてその中から自分に役立つ部分を探していくわけですが、「文系修士で就活」の背景を持つ人が全然いないので聞きようがないわけです。たぶんこの孤独感が文系修士の就活で一番しんどい部分だと思います。そしてこれは私がここで何かを書いたところで解決できる問題でない(一人分の体験記しか提供できないので)です。これを(部分的にでしかないものの)解決する方法は文系修士で就活した人がどんどん発信していくことなのでみんな書きましょう。

 以上、わざわざ書くほどのドラマチックな経験をしていない面白みのない体験記でしたが、そういったものもネット上にばら撒いておかないと文系修士の就活が実際のもの以上に大変なものだと思われてしまいかねないので一応書いておいた次第です。

 

[追記]

この記事はアカリク~大学院生(修士・博士)・ポスドクのキャリア~ Advent Calendar 2019に1日目として参加しました。

 

*1:すごく簡単に言うと他社から依頼を受けてシステムを開発する会社のこと。経験を積んで上に行くと企業との折衝・進行管理が中心になるのが好みの分かれるところ。詳しくは調べてください。

*2:どちらもSIerとは異なり、自分たちで製品を作って売っている会社。詳しくは調べてください。Web系といえば社名を出して退職エントリを書いてるようなところが思い浮かぶと思いますが、自分が行くのはBtoBなのでそういった企業群とは別のところです。

*3:ベンチャーと言えば4人くらいでマンションの一室を借りてやってるのを思い浮かべるかもしれませんが、そういったスタートアップではなく(未経験新卒を取る余裕が出てきた)従業員数3桁くらいのところです。

*4:東大が強いんだろと思うかもしれません(自分も書きながら思いました)が、周りを見てみると東大学部生/院生でも苦労している人はいっぱいいるので必ずしもそれだけではないらしいです。